峻岳の詩吟うん

 

5言絶句 「鹿 柴」 と 王 維



  鹿 柴  王 維

 
空山 人を見ず
 
但 人語の響きを聴く
 
返景 森林に入りて
 
復た 青苔の上を照らす

【詩形】五言絶句
【押韻】平水韻上声二十二養(響・上)
 【語 釈】
  鹿 柴:地名、川の別荘の一地点の名。鹿を飼うための柵の意から起こる。
  空 山:人けのないひっそりと静まりかえった山。
  人語響:人の話し声が聞こえてくること。
  返 景:夕日の照り返し。太陽が西に傾くと林の中まで光が射し込んでくる。
  青 苔:青々として地面に生えている苔。

【王 維】

  盛唐 (701~761年)
  太原(山西省)の人。字は摩詰
  開元中進士の第一に挙げられた。
  絵事中のとき、安禄山の乱が起こり、捕らえられ禄山に仕えた。
  画にも勝れ南宋画の祖となった。
  自然は詩人で、晩年は仏教に傾倒した。



             (右のカットは、王維・『晩笑堂竹荘畫傳』より)

【詩の解釈】
   ◆ 空山不見人:人気のない秋の終わりの寂しい山には人の姿が見受けられない(が)。
     ・空山:人気のない寂しい山。秋、冬季の落葉後の寂しげな山。
     ・不見:見られなくなった。見つけられない。見かけない。
     ・人 :人影。

  
   ◆ 但聞人語響:ただ人の話し声だけが聞こえてくる。
    ・但聞:ただ…だけが聞こえてくる。
    ・人語:人の話し声。
    ・響 :響く。響きを言い表しながら、静かさの程度を描写している。

   ◆ 返景入深林:夕日の照り返しが奥深い林に射し込んできて。
    ・返景:中国では“fan3ying3”と発音され、夕陽の光。日の照り返し。夕映え。
     「返景」は「返影」の意味で解釈される。〔えい;ying3〕かげ「影」≒「影」字。
    ・漢語の「景」は〔けい;jing3〕で、太陽、日光、風景、景色の意であり、
     日本では「へんけい(返景)」と読まれ、「夕映えの景色」「水に映った景色」と
     いった風に誤解されやすい。
  
  ・返:かえる。返す。≒「反」字。
     ・入:ここでは、日が落ちかかって斜めになった日が、天を掩うようにして繁った
       枝葉の横から射し込むさまをいう。(夕刻にのみ見られる新鮮な光景を詠う。
    ・深林:樹木が茂った奥深い林。

  ◆ 復照青苔上:(日中の高い日射しは、枝や葉に遮られて深い林の中には射し込まないが、
     夕刻、日が斜めに射すようになると、朝の斜光と同じように)また(森の中の)
     苔の上を照らすようになった。
    ・復 :また、ふたたび。「復-(動詞)」で語調を調える働きがあり、その意味で
     六朝期の詩には極めて多く使われた。陶淵明の作にも多用されている 。
     必ずしも「再び」の語義を穿鑿する必要がない。
    ・青苔:青々とした色のコケ。 *深林の奥深さの形容でもある。
    ・上 :…の上に。 *「復(ま)た青苔を照らして上(のぼ)る」と読むのもあるが、
     詩の構成から見ても、詩意からみても、ここは動詞「上(のぼ)る」の意ではない。
  

人気のない秋の終わりの寂しい山には人の姿が見受けられないのに、
ただ人の話し声だけが聞こえてくる。
これほど静かな奥深い森の中まで、夕日の照り返しが射し込んできて、
また(森の中の)苔の上を照らしているではないか。
 なんと云う静かで美しいことだろう。


気持ちをこめて吟じてみたい



  譜 面







   

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